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第2回 英語を育てる

前号では啓明学園での「高度バイリンガル(2つの別の文化の中で、2つの言語を使いこなし、それぞれの社会で一般社会人として仕事のできるレベルの言語能力)」を育てていく取り組みについてご紹介しました。今回はその中でも根幹を成す「英語を育てる」取り組みについてご紹介いたしましょう。  

■  第二次世界大戦中も守り続けた「英語教育」

もともと啓明学園は1940年に三井高維・英子ご夫妻がイギリスで教育を受けてきたわが子を含む、海外帰国子女教育のために、港区赤坂台町の私邸を開放して始まった学校です。当時は生徒が8名、教員が13名という異例のサイズでのスタートでした。その後1940年から日本も第二次世界大戦に参戦していくことになり日本国内では「英語」に対する風当たりがどんどん強くなっていきました。啓明学園に当時通っていた帰国子女の生徒たちの中には今の帰国子女の生徒たちと同じように日本語で会話をするよりも外国語で会話をするほうが自然である人が多く在学していました。日常会話を英語で話す生徒達に対して時折、登下校時に敵性語を使わないよう通行人に注意されたり、特別高等警察が訪ねるときには、いつも使っている外国語の本をしまって日本語の教科書を開き監視をかわした当時の啓明学園の様子が、木村太郎さんの著書「ディア・グロリア」(新潮社・2011年)にいきいきと描かれています。戦前・戦中と英語教育が滞る世相の中でも帰国子女の力を伸ばすための教育を日本で確立していくという創立の理念を曲げることなく、現地校と同じレベルの英語教育を守り続けて今日に至っているわけです。

■日本語のシャワーの中で

海外で生活していたときはその言語に浸かって生活していた子供たちが、日本に帰国したとたんに日本語のシャワーを一日中浴びることになります。海外の学校生活の中では、その国の言語で年間3000時間以上の時間を費やして、ようやく身に付けてきた現地の言葉です。帰国したとたん、日本語のシャワーの中でその子供の年齢相当に語学力を伸ばしていくということはそう簡単なことではないということは誰の目から見ても明らかです。そのために3000時間を確保することは不可能でもよりそれに近い環境を作り、上質の英語を集中的に学習していくということが非常に大切になってきます。  

■英語の飛び交うホーム・ルーム

啓明学園で、英語が日常で使われている環境の代表例の一つは生徒全員が集まるホーム・ルームです。啓明学園では在校生徒の約40%が海外生活経験者で占められ、帰国生の約80%が現地校出身者です。生徒が集まる場所では自然に英語が飛び交うようになります。日本国内だけで生活してきた生徒たちも自然にその環境に慣れて、帰国生同士の英語の会話に少しずつでも参加していくということが啓明学園での普通の光景です。前号でもご紹介しましたが、人間が二つ以上の言語を学ぶときに得意な言語の力を伸ばしていくと、もう一つの言語もその力の伸びに沿って伸びていくということが知られています。啓明学園ではこの考えに基づき、得意な言語が英語である場合にはできるだけ英語を話し、読み、書く機会を日常からつくることで、海外では身に付きにくかった日本語も伸ばしていこうと考えています。  

■国際英語クラス Regular Class/ Honors Class

啓明学園では、英語圏で学習してきた人たちのクラスを2段階、Regular ClassとHonors Classとに分けて国際クラスで学習を進めていきます。基本は英語圏現地校でのLanguage Artsの授業展開と同じです。教科書も同様に英語圏現地校で使用されている学年相当のものを使用し、徹底的に読み、書き、発表することをくり返していきます。中学校では「Literature Reading with purpose(Glencoe/Mc Graw Hill)」高校では「Write Source(Great Source)」を中心に使用し、他にも多くの文学作品をリーディングの教材として使用しています。現地校での授業と同様に授業の始まる前にシラバス(年間授業スケジュールとそれぞれの課題についての目標・目的)とルーブリック(各課題の目標設定、評価設定)が示され各自が自分の課題に関して責任を持って、内容、質、時間の管理をしていくという欧米英語学習圏で通常行われている学習体制をとっています。言語を学ぶと同時に、現地校で学んできた学習に対する姿勢を確実なものとしていくためです。確実に英語の実力を上げていく為には努力をしなければならないことを生徒はよく理解しています。睡眠不足になりながら全ての課題をこなしてゆく生徒たちは現地校で必死に学習をする高校生となんら変わりがありません。  

■KIS(Keimei Gakuen International School)

土曜日には希望者には英語学習するのでなく英語学習をする集中講座「KIS」を開講しています。海外での補習校が土曜日に日本語での学習を行うのに対して啓明学園ではそれを英語バージョンに変えた形で英語を使って考える機会を増やしています。このプログラムのクラス構成は学年単位では無く、英語の実力によるクラス分けがなされます。英語のビギナーから大学のレベルに近いクラスまで用意されています。  

■実力を測る

確実に自分の英語力が上がっていることを確認するために、毎年11月にITP-TOEFLを全員に課して自分の成長を確認します。学内の試験だけでなく、世界標準のテストを受けることで自分の英語力が確実に向上していることを確かめるためです。生徒たちには毎年過去3年間のTOEFLの成績が通知され、自分の位置を確認すると共に、次のテストに備えていきます。前年度の結果では、中学1年時にibtベースでクラス平均70点だった点数が高校2年時には88点に上がっています。年々、確実に実力が上がっていきます。  

■英語を使って世界と繋がる

啓明学園の英語教育では「英語を学ぶ」だけでなく「英語力を使っての発信」にも力を注いでいます。その一例が高校生対象のビジネスアイデアコンテスト・「フェデックス・インターナショナル・トレード・チャレンジ」への参加です。2007年から毎年開催されているこのプログラムは、提案されたビジネスの設定の中で自分達独自の仮想の製品やサービス(ただし、実現可能な事柄)を提案し、マーケット設定、輸送計画から最終的な利益目標までを作り、そのアイディアを企画書・プレゼンテーション全てに渡り英語で競うというものです。毎年上位3校が国際大会に進み、6年目の今年度は、日本、マレーシア、シンガポール、韓国、香港、ニュージーランド、タイ、フィリピン、ベトナムの9ヵ国が国際大会に参加しています。6年間の大会のなかで今年度を含む3回優勝という快挙を成し遂げています。

■終わりに

啓明学園では最終的に「英語を学んだ」ということでなく、「英語」がそれぞれの生徒の在り方の一部として人生展開に不可欠なものとなるよう、そしてその英語を使いながら生きていくという在り方をめざしています。世界のどんな都市を訪ねても多くの卒業生がその社会の一員として活躍しているのに出会えるのは啓明学園ならではの特徴であると考えています。   >>>第3回 真の『世界市民』を育てる