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第5回 “Think Globally. Act Locally.”

前回にご紹介した通り、啓明学園での国際理解の授業は、学園理念である“地球市民を育てる”ために、世界で起きていることを把握し、世界の人々と共に生きるために一人ひとりが出来ることを見つけ、行動できる人を育てることを目標としています。今回の「高校3年生 国際理解の実践 後半」では、1年の前半で学んだ「世界の現状」を把握した上で、世界の人々と共に生きるために出来ることを模索するという授業の内容をご紹介していきます。今回も前回のように2回のワークショップの様子と「生徒の振り返り」をご紹介し、その後は1年の授業を通して生徒達が何を学んだかについて少し触れてみたいと思います。  

■KIVA

啓明学園では2010年度から、米国に拠点を置くNPO「KIVA」(スワヒリ語で絆の意味)を通して通常の銀行からは融資をうけられない途上国の起業家の人々に対して、実際に小口融資をすることで、貧困層向けの事業資金を融資し、生活水準の向上を促進する活動に参加しています。このNPO「KIVA」は、貧困緩和を目的に、融資を通して人々をつなぐことをミッションとしています。2005年に立ち上げられ、事業資金を銀行から借りられない途上国の人と、融資で応援したい人をネットで結び付け、途上国の人々の自立を手助けしています。啓明学園では2010年に高校3年生だった生徒達が出し合った出資金を元手に、「Keimei Global Studies」というチームとして、どの融資希望者に資金提供をしていくのかを決めて毎年融資をしています。南エクアドルで服を売り、9歳の娘を育てる33歳の女性、アフリカのウガンダで職員を売っている5人の子持ちの49歳の男性... 生徒が1口25ドル無利子融資をする人をグループごとに選びます。その後、何を優先基準にして融資したいかをグループごとにプレゼンテーションをしていきます。子供の多い人、GNPが低い国の人、子供の未来のためにお金を使いたい人などの意見が発表された後、最終的にチームとして融資希望者を3~4口(その年の返済状態による)を選び、実際に融資します。このプロセスの中で生徒たちは世界中の人々がどんな夢をもって、何を必要としているかを知り、実際に自分達の融資した資金がどう使われて、どんな変化をもたらしていくのかを身をもって知ることとなります。授業で取り組んだ後も、生徒や卒業生がフェイスブック等で連絡を取り合い個人で融資を始めたり、返済され戻ってきたお金を再び投入したりしています。KIVAのネット上では、「Keimei Global Studies」チームとして今までに、29人に融資したことになります。「お金が希望のために使われている」、「未来や人とつながる大きな25ドル」などが生徒たちの思いです。この活動は、2012年3月22日の朝日新聞の「教育・あしたへ⑤お金、今学ぶ“考えて使う 世界を 未来を”」で紹介されました。 以下は生徒の感想です。 「やっと自分でも出来ることが見つかった気がしました。KIVAのシステムは、お金を貸す方にも、借りる方にもメリットがあると思います。自分も他の国のことを知ることができ、他国に住んでいるような気分になれたり、他国の文化について触れることが出来ます。募金ではないので、支援を受けた人々は自立する方法や生活する方法を学べると思います。私は過去に募金をしたことは何度もありますが、そのお金がどう使われ、誰のもとに届くのか分からなかったので、本当に役に立てているのか不安でしたが、KIVAのシステムならこの心配はないと思いました。」 「自分が一番大切だと誰でも思うことで、今の世の中、無条件で自分の持っているものを貸したり、あげたりすることはあまりない。しかし、KIVAの活動を見て、KIVAに参加している人々は自分の利益のためではなく、助けを求めている人々を本当に助けるためにKIVAに参加しているんだと思った。この授業で人の優しさ、力を合わせて助け合うことの大切さを改めて知った。」

■iEARN “Machinto Project”

学年の最後のまとめに行っていることは、「平和を築くために一人ひとりが出来ること」をグループごとで話し合い、授業で発表し、その後それぞれの発表作品を再構成して世界の人々とネット上で共有しています。 iEARN (international Education and Resource Network)とは、ネットを介し世界の生徒と教育者が協働支援を行う組織で、125カ国、30,000以上の学校が参加しています。iEARN のCollaboration Centerでアップされた生徒の作品は他国の生徒が閲覧し、コメントをすることが出来ます。今年は、「平和」をテーマにしているロシアの教師より生徒の作品をクラブのブログで紹介したいとの依頼がありました。 生徒の作品の一つを紹介します。 このグループは、平和を築くために必要な要素として3つの”C”を提唱しました。Communicationはお互いを理解し合うのにとても大切であり、Cooperation 協力をし合うことによってより力を発揮することが出来るようになり、Culture お互いの文化の違いを尊重し合うことによって、より親しくなりお互いの目的に近づけることが出来るとういうことを発表しました。

■年間授業を通しての生徒の感想

「多くのゲストを迎え、話を聞くことで、世界にはこんなにも多くの平和活動家がいることを実感した。また、本当に人の価値感はそれぞれであり、世界市民、国際人として私達は異なる考えを柔軟に自分の中に取り込む大切さを学ぶことが出来た。」 「コミュニケーションの必要性を強く感じた。授業であまり話をしたことがない人と、グループになって話しをする機会が多くあった。社会では、コミュニケーションがないと成り立っていかないと思う。世界の人々と通じ合うことも、やはりコミュニケーションが大切だ。そして異文化を受け入れること、お互いを理解し合うこと、平和が大切だと知ることが出来た。」 「日本は平和ボケしすぎているということを毎回の授業で学んだ。戦争、紛争、貧困、女性への差別、今の日本にはあまりない問題ですが、世界にはそれで苦しんでいる人々が多くいることにショックを受けた。今までは正直言って、他人ごとのように受け止めてしまっていたこともあったが、この授業を受けてから世界市民としての意識を身につけることが出来た。これからは、世界の問題をさらに考慮できる大人になりたい。」 「この1年間で私は世界に対しての関心がとても強まった。以前から、もっと世界について学びたいと思っていたので、授業で様々な人と接し、それぞれがもつ価値観に触れることにより、始めに思っていたイメージと代わった国もあれば、もっと興味を持ち、実際にいつか自分も行ってみたいと思う国もあった。本当に世界と自分がもっと近い距離になったような気がする。大学では、国際文化交流学部に進学するので授業で学んだことを基盤にしてもっと世界について学びたいと思います。」 「国際理解の授業は、他の授業にない授業スタイルでグループワークをすることや発表することなどで、自分の意見を言う機会が多く、それによって意見を言う重要さやグループワークの難しさを改めて感じることが出来た。また、平和について考える時間が多く、自分に何が出来るかを考え、より世界に関心をもつようになった。」 おわり