平成11・12年度帰国子女教育研究協力校の研究成果の概要

 

    学校名: 啓明学園 初等学校

    校長名: 佐々 信行

    所在地: 東京都昭島市拝島町5-11-15    

    電 話:  042-541-1003          ホームページ http://www.keimei.ac.jp

   本学園は、1940年4月東京の赤坂台町にあった三井高維氏の私邸を開放して、海外勤務者 の子女教育のために創立されたのが始まりである。その後、東京の近郊、昭島市にある三井家別邸の寄贈を受け、現在は校地約3万坪の高台に防音・冷暖房完備の校舎が3棟建てられている。多摩川の清流を眼下に見下ろす、自然に恵まれた環境の中で、子ども達はのびのびと学園生活を送ることができる。幼稚園から高等学校までの一貫教育の中で、帰国子女の受け入れを積極的に実施し、少人数定員できめ細かい個別教育に努めている。1972年に国際学級センター(現在では、国際教育センターと名称を変更)を設置し、同年、文部省から海外勤務者子女教育研究協力校に指定された。帰国子女教育では、約60年の歴史と経験を持つ学園であり、パイオニア校として知られている。

 学園の児童生徒数及び帰国児童生徒数は、表1に示す通りである。過去2年余り、初等段階での帰国児童が急増しており、初等学校では学年定員(50名)を大幅に超えてできるだけ受け入れる努力をしてきたが、ほぼ限界に近い。他方、中学・高校段階では、一昨年をピークに、やや減少傾向が見え始めた。「帰国子女受け入れ」を掲げる学校が増え、また、公立高校でも3年まで編入を認め始めたことも要因と思われる。

                           表1 平成12年度末の児童生徒数及び帰国児童生徒数

     

    全児童生徒数(前年比)

    帰国児童生徒数(前年比)

    外国人児童生徒数

    初等学校

    320 (+19)

    85 (+24)

    15 (- 1)

    中 学 校

    392 (+ 2)

    93 (-12)

    21 (+13)

    高等学校

    427 (+ 7)

    144 (- 7)

    26 (± 0)

 

帰国児童生徒の実態について推移は、年度初めに帰国生・外国人生徒が在籍者に占める割合は、初等学校で約30%、中学校約30%、高等学校約40%である。また、随時編入の制度を実施しているため、この割合は日々増加する。表2は、帰国生の滞在地域一覧である(複数回答なので、合計は帰国生よりも多い)。国の数では50ヶ国に及び、全世界からの帰国生を受け入れていることがわかる。なお、外国人生徒の国籍は20ヶ国である。表3に示すとおり、帰国生の海外での滞在経験年数をまとめると、本学園の平均海外滞在経験は、約6.5年であり、長期間海外で生活していた児童・生徒が多い。そして、表4に帰国生の海外での学校種別をまとめると、帰国生のほとんどは、現地校または国際校の出身者で占められ、現地で習得した言語に大変強いことがわかる。日本語の能力がほぼ皆無の状態から、編入後すぐに普通クラスの授業についていけるレベルの者まで日本語力は実に多様である。学園には帰国生・外国人生徒が多く在籍していることからもわかるように、学校生活への適応は円滑に進む例がほとんどである。

                                 表2 帰国生の滞在地域一覧

 

北アメリカ

中央アメリカ

南アメリカ

ヨーロッパ

アフリカ

中東

オセアニア

アジア

初等学校

43

3

2

20

1

12

中学校

46

2

6

21

4

19

高等学校

76

3

46

1

8

30

                                  

表3 帰国生の海外での滞在経験年数

 

初等学校

中 学 校

高等学校

学園全体

2年未満

14

2年~4年未満

28

29

39

96

4年~6年未満

26

25

38

89

6年~8年未満

16

21

29

66

8年以上

16

32

57

                                  

表4 帰国生の海外での学校種別

 

初等学校

中 学 校

高等学校

学園全体

比 率

日本人学校

23

21

51

15.4%

現 地 校

53

71

101

225

70.0%

国際校その他

14

14

27

55

16.6%

                                                                           (注意:複数回答。学齢前の未就学は11名)

 

帰国児童生徒の受け入れに当たっては、予め保護者から「履歴データ」 と海外の学校での成績や出席・活動状況等が分かるものを提出してもらい、海外での成育歴・就学歴等に関する情報を把握する。また、編入試験の事前相談で保護者と本人から、海外滞在中及び帰国後の生活環境などについても詳しい話を聞いている。編入試験時には、児童の学習してきた語学力・日本語力・算数の習得状況を確かめる。中学・高校レベルでは、現地で習得した言語による作文やペーパーテストを実施し、各児童生徒のための個別指導プログラム作成に役立てている。それにより、日本語が皆無の生徒であっても、受け入れに支障はない。編入試験(面接を含む)の結果や上記のデータは、個人ファイルとして国際教育センターに保管し、その後の個別指導に必要が生じた時、教職員がいつでも閲覧できるようにしている。

 

本学園は、初等学校より高等学校まで帰国生受け入れの体制を整備しているため、受験などの弊害を極力避けることが可能である。また、各学校間の連絡会などで児童一人一人の情報交換と学習履歴の把握を行うことにより、継続ある学習計画を立てることが可能であり、基礎基本を大切にしっかりとした知識と見識を身につけさせることに目標を置いている。生活面においては、のびのびと生き、自分の意見をしっかりと持ち、それを表現できる力を養わせることに、重点を置いて指導している。創立以来帰国生の受け入れを積極的に実施してきた学園の受け入れる体制として次のことを確立してきた。

 

(1)国際教育センターの設置

  • 帰国・在日外国籍児童生徒の学習・生活適応を全面的に援助し、カウンセリングも行う。また、児童・生徒の保護者、海外進出企業、他の帰国子女受け入れ校などからの相談にも応える。センターは、帰国・在日外国籍児童生徒の教育の他に、国際理解教育の視点から海外姉妹校との交流、留学生の派遣や受け入れなどを行う機関としても担っている。

 (2)随時編入制度

  • 保護者が、帰国した時点で何時でも編入試験を実施する体制を整えている。保護者の勤務状況によって定まらない帰国時期への配慮ばかりでなく、帰国生が海外で習得した外国語力の保持・伸長と、国内の水準に照らした場合の未学習教科、未学習分野の学習をいち早く補えるという点において有効である。また、家族と共に帰国できることから、家庭の援助が受けやすく、順調に日本の生活に適応できる。毎年60人以上の児童生徒が編入している。

 (3)国際学級教室の設置

  • 取り出し教科(国語・算数)を学習する特別教室を設置し、教材・教具・資料を整備している。 また、海外の民芸品なども展示し、実感を伴う国際理解の資料として利用している。

 (4)混入方式ホームルーム制

  • 帰国児童と海外経験のない児童とを分けずに、学年相当のホームルーム(以下クラスとする) に混入している。学校生活においては、一般の児童と一緒の方が早く適応することができる。

  (5)取り出し特別授業1

  • 国語・算数の取り出し授業を行い、未学習の分野を個別に学習する。クラスと同じ内容を学習できる力に達した時点で、担任と連絡を取り合い、クラスでの学習に切り替える。1時間の授業に、2名ないし3名の教員で指導にあたっている。

  (6)取り出し特別授業2

  • 初等1年から、週2時間英語の授業を行っているが、とくに英語圏からの帰国児童には、英語力を保持・伸長できるように特別授業が組まれている。そのクラスは、ネイティブの専任教員1名と講師2名を配属し、啓明学園初等学校の独自カリキュラムに基づいて指導している。

  (7)帰国児童の学習状況の報告(学習連絡会議)

  • 取り出し教科(国語・算数)について、各児童の学習状況と生活の様子は、逐次担任に報告している。クラスに戻す段階になると、教室での学習を徐々に体験させ、様子をみながら、その後の措置を決定している。また、全体の概要については、折あるごとに職員会で報告するほか、国際教育センターを介して中学校の教員とも連絡を取り合っている。

  (8)国際学級保護者会の実施

  • 帰国・外国籍児童の保護者などが学期に1回集い、共通の悩みや課題を出し合い、また、 教員との情報交換を行う場を設置している。

 

本学園が掲げた平成11・12年度の研究主題は、(1)「個に応じた教材の開発」(2)「帰国児童の適応指導と特性の活かし方」である。(1)は、帰国児童一人ひとりのバックグランドを調査・把握し、個に応じた指導法・教材を研究した。近年、海外経験の長い児童を預かるケースが多く、学習面はもちろんのこと、心理面でのケアが必要になってきた。また、(2)は、異文化の中で生活してきた体験は、とても貴重なものであり、本人が自信を持って適応していけるよう、それらを学校生活や授業の中で活かせる機会を可能な限り今後も作っていきたい。また、一般の児童にとっては、それらが日常的な異文化接触の機会となるような条件整備を研究している。具体的に研究の成果をまとめると次のようになる。

  • 帰国児童が、一般の児童と同じクラスで、多くの児童と過ごすことにより、早く学校生活に慣れ、生活に必要な日本語の獲得も早い。また、一般の児童にとっても、帰国児童をクラスの仲間として受け入れ、すぐに打ち解けることができている。お互いの得意、不得意などを自然に認め合うことができ、大きな成果をもたらしている。
  •  国語・算数の取り出し授業では、個別指導なので、一人ひとりの理解に合わせて学習を進めることができる。教材は、教員の手作りがほとんどであり、児童生徒の意欲をかき立てる効果がある。
  •  英語の取り出し授業では、海外で学んだ英語を保持・伸長できるようカリキュラムが組まれている。専任のネイティブ教員による直接指導と、保護者の家庭教育の助けにより現地の児童年齢と同等の英語レベルを維持することを目標としている。海外再赴任の可能性もあることから、語学の保持・伸長教育には、力をいれている。多くの児童が英語を自分の得意教科として取り組んでいる。英語検定試験などにも挑戦し、高い級に合格している。

 

本学園は、帰国子女教育を目的に創設された背景があり、全教員が携わり研究することを基本 としている。取り出しの授業ではもちろん、クラスでもそれを実践していくことが学園の教育理念を達成することにつながる。また、中学校・高校と一貫教育を行っているため、初等学校を卒業しても、引き続き学習や生活の継続指導が受けられることは大きな成果である。

研究に基づき得られた今後の課題は、一人ひとりの児童のバックグランドや学力は極端にバラついており、それぞれの児童につき、興味や学習意欲を持たせられる教材や指導の工夫が必要となる。現在、初等学校には日本語を専門的に教えられるコースがない。今後は、日本語の指導のあり方についても検討していきたい。また、高学年になると、理科や社会を学習するためには、難しい日本語を理解しなければならない。それらをどのように補強していくか、研究が必要である。本学園の国際学級に期待する声は大きいが、帰国生の増加が教育の質の低下につながらないよう個別指導の充実徹底に配慮したい。

なお、初等学校から高等学校までの、学園全体の帰国子女教育や国際交流活動を、総合的に企画・運営する支援部署として国際教育センターが設置されている。この国際教育センターの専属スタッフを中心に、日々の教育活動から今後も実践的な研究を重ね、21世紀型国際校をめざすつもりである。

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