2022年度第2学期終業式校長訓示

2022年度2学期終業式

 サッカーワールドカップが終わりました。日本代表の活躍も話題でしたが、日本のサポーターがスタジアムでゴミ拾いをするのも話題となっているようです。また日本代表のロッカールームも試合後とてもきれいだと称賛されているようです。今日は掃除のお話をします。

 皆さんには教室を毎日掃除していただいています。とても感謝しています。先日は大掃除もしていただきました。ありがとうございます。生徒が学校の掃除をするという文化も日本独特だと聞いたことがあります。自分で汚したものは自分で始末をつける、きれいにする。これは良い日本の文化として皆さんに身に付けてほしいです。

 サッカーだけでなく2019年のラグビーワールドカップ日本大会でも観客によるスタジアムのゴミ拾いが話題になりましたので、今や習慣というか暗黙のルールになっているのかもしれません。中には卑屈だからやめろとか、どうせ海外メディアの目を気にしているんでしょという声もあるようですが、どうも的外れな気がします。ただ単純に、自分が汚したところをそのままにしておくのは気持ちが悪い、他人に掃除させるのは申し訳ないという気持ちがゴミ拾いに向かわせているのではないかと思います。

 あともう一つ、日本人にとって戦いの場は神聖な場所、という意識もあるのかもしれません。例えば相撲の土俵は一番ごとに箒できれいに掃かれますし、その上に力士は塩をまきます。塩をまくというのは日本では清める意味がありますね。もともと相撲の舞台は清く神聖な場所ということになっています。また、柔道・剣道・弓道などの武道でも、その舞台に上がろうとするときは一礼します。相手に対してではなく、その場に対してです。その伝統からか、様々な競技で日本の選手は自分が競技をする場に対して一礼する人がいます。戦いの場は清らかな神聖な場所である。そうした日本人のメンタリティーが観客にも引き継がれて、スタジアムのゴミ拾いに向かわせているのだと思います。

 最後に、東京の羽田空港は2016年に世界中の国際空港の中で最も清潔な空港として賞を受けて以来、これまで連続の1位です。その羽田空港では働く500人の清掃員を束ねているのが新津春子さんと言います。いまや自分のYoutubeチャンネルを持ったり講演会に招かれたり海外メディアでも取り上げられたりと引っ張りだこの方です。実は新津さんは17歳の時に中国から日本にやってきました。日本語が一言も話せなかったそうです。お父さんは中国残留日本人孤児です。日本で清掃の技術を一生懸命磨いて技能コンクールに出場ところ最初2位だったそうです。どうして、私のほうが技術では勝っているのに!と思ったそうですが、その時の上司に、「掃除は技術だけじゃない、それを使う人の気持ちを想像して、感謝されることが大切なんだ」と諭されました。確かにそれまでは私は自分のことだけ考えていたと反省してから、多くの同僚たちの信頼を得るようになったのだそうです。また利用者の方から感謝の言葉をかけられるようになったとも言っています。皆さんも、この学校の清掃をしてくださっている方にを見かけたら、ぜひ感謝の言葉を行ってくださいね。

 明日から冬休みですね。家で大掃除をする機会もあると思います。ぜひ自分が住まう家という場に感謝して、またそれを使う家族に人たちの気持ちを想像しながら、掃除をしてみてください。そしてすがすがしい気持ちで新年を迎えてください。よいお年を。