2022年度第3学期始業式校長訓話 「一年の計と暦について」
新年明けましておめでとうございます。新しい年を迎えました。実は世界の人々にとって、新年は1月1日とは限りません。その民族の歴史や文化、伝統などによって独自の新年を持っている地域が今でもあります。日本は、今からちょうど150年前の1873年、明治6年の1月1日から西洋で使われていた太陽暦が、それまで使っていた暦を捨てて、日本で使われることになりました。
この年は明治政府が矢継ぎ早に江戸時代からの古い慣習を捨てて、西洋の近代国家に倣って改革を打ち出しています。例えば地租改正といって国の税金の制度を整えました。江戸時代は農民だけがコメなどをその地方のお殿様に差し出していました。これ以降は土地を持つ全国民がお金で税金を納めなければならなくなりました。あと徴兵令というのが布かれて男子は20歳になると軍隊に入って3年間も兵役に努めなければならないことになりました。これで近代的な国家の軍隊を作ったわけです。あと面白いものでは仇討ち禁止令とか外国人との結婚を認める法律とか、キリスト教への弾圧をやめたりなど、それまでの江戸時代の慣習を覆して大きく変わっていきました。
さて、太陽暦が150年前の明治6年から始まったのですが、これも西洋の国々に合わせて、それまで利用していた暦を日本はやめたわけです。ちょっと暦の話をしましょう。先ほど世界に新年はたくさんあるという話をしましたが、代表的なものを3つ紹介します。今私たちが使っている太陽の動きをもとにした太陽暦と、月の満ち欠けをもとにした太陰暦、それと両者を組み合わせた太陰太陽暦です。太陽暦はヨーロッパで定められた暦です。毎朝地平線から太陽が昇って来るポイントを見ていれば、およそ365日後に同じ地点から太陽が昇るのでそれを1つの周期、すなわち年としたわけですね。太陰暦は月の満ち欠けの周期に注目したもので、イスラム暦が代表的なものです。ただ月の満ち欠けの周期は29.5日ですので、これを12回繰り返しても354日にしかならず、太陽暦とは11日ずれます。ですからイスラムの祭日などは太陽暦のカレンダーでみると毎年前へ前へとずれていきます。今年夏に行っていたお祭りが15、6年後には冬の時期に行われることになるのです。宗教的お祭りならいいかもしれませんが、これだと困るのが季節に合わせた仕事です。例えば田植えの時期などは季節をずらすわけにはいきませんね。そこでそれらを組み合わせて、月の満ち欠けをひと月としながらも、1年を太陽の周期として両者を調整したものが太陰太陽暦です。これは中国で作られた暦で、日本は江戸時代までこれを使っていました。日本以外にも中国文化圏の国々が使っていました。中国では暦を定めることができるのは皇帝のみに天から許されたとても特殊な力、権力の象徴ともいうべきものでした。日本は1000年以上も中国の暦を使っていたのですが、そこから脱し、西洋化への道を進んでいった点でも、150年前のこの大陽暦の採用というのは大きな出来事でした。
学校は4月に始まりますが、はやり「1年の計は元旦にあり」ということわざ通り、気持ちを新たにしてまた次の1年をどう過ごすかを決意するのは正月が適当です。皆さんはこの1年をどのように過ごしますか?またこの1年でどのように自分になりたいと考えますか?ぜひ自分自身で1年の計を立てて、充実した1年を過ごしていきましょう。AOビル